巨額の補償額に直面することが明らかな東電のあり方をどう考えるか、ということについて、いろいろな「支援策」が新聞紙上に踊っています。
東電は、一民間企業でありながら、民間企業としては極めて厳しいレベルの補償額を負っていくことになることはほぼ明らかです。もちろん原子力賠償法によって、東電で負い切れない場合、国が負うべき責任も明らかにはされていますが、一義的には東電が責任を負うことになります。
一方、東電は民間企業です。しかも、5兆円の社債残高を抱え、金融市場に大きな影響を及ぼしうる存在です。株主も極めて多数に上ります。
このような状況下において、東電1社では負い切れない補償額について、何がしかの支援策を考えざるを得ないことも事実です。新聞紙上で踊っている支援策は、かつて、銀行が不良債権によって傷ついた際に考えられた、預金保険機構の考え方とよく似ているように見えます。
このような支援策を考える際に、十分留意しなければならいことは、「モラルハザード」。このような支援策を作ると、最終的に負うべき責任が、ある意味、一電力会社としては軽くなるわけですから、安全面に対する備えなどについての取り組みが、相対的に弱くなるおそれがあります。
このような支援策を導入する際には、今回、東電における経営上の責任の明確化を徹底的に行い、また、仕組み上も原子力事故が起こった場合の経営責任を徹底的に追求できるようにしておくことが、絶対的に重要です。
安全でかつ安定的な電力の供給は、国にとっていわば生命線とも言えるほど重要なものであるだけに、このような厳格な取り組みが一層重要です。