米国が、北朝鮮に対するテロ支援国指定を解除する方向に動いていることで、日本国内には衝撃が走っています。
拉致問題において確かな進展がなければテロ支援国家指定を解除するべきではないというのがこれまでの日本の立場。米国はそれを十分知っているはずなのですが、秋に大統領選が行われるという国内事情から、何がしか目に見える成果のようなものが必要ということで、解除に走っているものと思われます。
日本の意見が、米国の国内事情に対して後ろに追いやられた形です。
この動きを見ながら、思い出される言葉がひとつあります。小泉元総理が言っていた、「日米関係がうまくいっていれば、アジア関係もうまくいくんだ」という言葉です。
私は常々、「そんなことはあり得ない」と主張してきました。
国際社会は、各国の思惑、利害関係が、赤裸々にぶつかり合うところです。どの国も自国の利益が最優先。それが現実です。ですから、米国との関係さえうまくやっておけば、あとはアジア関係も含めて米国が日本のためにうまくやってくれる、などということはあり得ないのです。
それが如実に現れているのが、今回の日本の思惑とは異なる、米国の動きではないでしょうか。
以前外務省の幹部を務める先輩から言われたことがあります。「外交の一番重要なことは、できるだけ多くの選択肢を手に持っておくということだ」と。
私も全くその通りだと思います。どこかの国とだけ手を組んでいれば、すべて安泰などという、生易しい国際社会はありません。国際社会においては、常に周囲を見渡しながら、駆け引きをしながら、細い糸の上を芸術的なバランス感覚で生き抜いていく、そういう覚悟が必要なのではないでしょうか。
小泉元総理は、国内政治についてこう言っていました。「敵と思えば味方、味方と思えば敵」 そのような心構えで国際社会における舵取りが行われていれば、もっと日本の立場は確かだったかもしれません。
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