人間は誤りを繰り返す

金融機関の会計基準に関して、この金融危機を受けて、時価会計を一部凍結する動きが欧米からあり、日本もこれに追随するようです。

私はこれはいかがなものかと思います。

今回時価会計を見直すのは、金融商品などでこのような市場の混乱期に投売りが生じて値がつかないような状態が発生し、その時に時価会計を導入していると損を莫大に計上しなければならないがゆえに、市場の不安心理をあおりかねず、さらに危機を大きくする、したがって、部分的に時価会計を見直して市場の安定を取り戻そう、という考えだと思います。

その考えに一見理屈はありそうに見えますが、そうでしょうか。市場の不安定性を取り除くには私は透明性の確保が最も重要だと思います。今回はデリバティブなどを活用した非常に複雑な証券化商品が世界中に散らばり、そのためにどこにどのようなリスクが存在するかが明らかでないことが市場の振れを増幅しています。

これはある意味金融商品のリスク評価という点での透明性が確立していないことの結果であって、これを会計基準でさらに見えなくするのは本末転倒ではないかと思います。

今回の措置をまともに導入すると、どの金融機関がどの程度の含み損を抱えているのかさらにわからなくなり、市場の疑心暗鬼を余計に招くのではないでしょうか。

サブプライムローンに端を発し、世界は「バブル」という誤りを犯しました。その対応において、私はまた大きな誤りを犯そうとしているのではないかと危惧します。