今年夏に開催されたWTO閣僚会議での交渉は、最終的には米国とインドの対立が解けず、合意を得ることなく終わりました。
その後、8月、ファルコナー農業交渉議長から一通のレターか各国に配布されてきました。それは言わば議長による交渉結果の総括。
その中には、日本として本交渉の中で最重要争点であった、重要品目(高関税での保護が認められる品目)数について、「全体(約1300品目)の4~6%ということについてはご案内のとおり」といった趣旨の文章が書かれていました。
日本は最低でも8%の重要品目数が必要との立場で臨んでいます。しかし、日本の政府はこのレターを受け取った後、議長に対して「日本はこれに納得していませんよ」と噛み付くことは一切していません。農水省に聞くと「これは議長の個人的なとりまとめだから・・・・・」と言って、放置している状況です。
私に言わせると、これは国際交渉の中ではあってはならない態度です。議長のとりまとめであっても、勝手に各国にこのような文章を回され、それに対して日本として何も言わないということは、この内容を追認したということになります。「あれは議長の個人的なとりまとめだから」とこちらの勝手な理解を言ってみたところで、国際社会はそんなに甘くはありません。
私は、WTO交渉に臨む日本政府の交渉態度がどうも弱腰に過ぎるのではないかと見ています。「日本のせいで交渉全体がまとまらないと言われてはいけないから」、と早々に交渉ポジションを降りてしまいます。この夏の交渉もそうで、8%というこちらの最低限の主張も、早々に降りてしまっているので今や取り上げられません。「交渉がまとまらないといけないから」と降りたわけですが、ご存知の通り、米・インドは最後まで譲らず交渉は決裂しました。日本が降りなくても交渉はまとまらなかったのです。そんな中で早々に降りる必要は全くありませんでした。
挙句の果てに、議長からのレターについては対応せず。国際交渉の場は、自国の利益をかけての「生きるか死ぬか」と言った交渉です。今のような交渉態度では日本の国益は守れません。
金融危機を受けて、今年中にも再開されることになっているWTO閣僚会合は今のところ開催のめどは立っていません。開催されたときの流れが心配です。
コメント
コメント一覧 (3件)
国会議員の中で国際関係に視野のある人は、大変少ないと感じています。なぜなら、定額給付金のことでもめているからです。国家の基本的な構造がしっかりしていないと、外国からの突発的な波に大きな影響を受けてしまいます。大串議員のような方が、もっと認められるように陰ながらお祈りしています。
WTOに臨む際の日本の、あるべき姿勢については、大串議員のおっしゃることが全くもって正論だと思います。
ただ、8%枠を守ることが将来的に日本の国益になるのかどうか。これは大串議員を批判しているのではなく、純然たる疑問です。農家を今の高額の関税、非関税障壁で守り続けていくことが日本農業の為になるのか、あるいは関税率を下げるなどして、完全な自由化は選択肢の外としても、それに近づけたほうが良いのか…
国際交渉では意見を言わない限り無視されるのは、大串議員のおっしゃる通りです。拉致問題、竹島、尖閣諸島、北方4島を、あらゆる国際会議で毎回必ず主張すべきです。国を代表して出席する人の責務です。
しかし、食糧問題は、需要面とコスト面と国土保全面から、どの品目を、どのような生産方法で、どのくらいの量の自給を維持するのが最適なのかを、考えるのが先でしょう。全てを自給はできるわけなく、コスト高で破たんします。また、最終製品の自給率を高めても、種子や飼料や燃料を輸入に頼っては自給のメリットはありません。
TK43様のおっしゃるように、必要不可欠な最低限の自給維持で、残りは自由化で良いと考えます。調達先多様化と備蓄で、安全保障も低コストで確保できます。
8%という数字に拘るのや、捕鯨にこだわって重要な同盟国と悶着を起こすのは、戦前の建艦制限でコンマ以下の数字にこだわって国内テロまで起こした愚を思い出します。
賢明な大串議員には釈迦に説法でしょうが。