先日、財務省内で来年度予算要求について議論を行っていた部内会議において、予算担当者からこんな発言がありました。
「これまでとは異なって、『予算を獲得するリスク』というものも認識するようになりました」と。
「予算を獲得するリスク」というのは変わった言い方ですが、この担当者が言わんとしていたことはこういうことです。
民主党政権になって、昨秋から事業仕分けを行ってきました。さらには今年の春には、行政事業レビューと銘打って、各省庁が独自に事業仕分けを行う仕組みも作ってきました。これらの取組みはいずれも、予算を獲得してきて使うのであれば、国民の皆さんに十分目に見え、納得できるような形で、その意義、効果を説明できなければならないという考え方に立って、公開の場で予算に関する説明責任を高めていこうというものです。その意義、効果が疑問視されるような予算については、事業仕分けなど公開の場で厳しく精査されます。
このような説明責任に対して、この担当者は「予算を獲得するリスク」という表現を使ったのだと思います。
私は、この言葉を聞いたときに、民主党政権において、事業仕分けや行政事業レビューなどの公開プロセスを行ってきたことの本当の意義が発揮されてきたと感じました。
事業仕分けは、もちろんその中で、無駄な予算が浮き彫りになるという効果があります。しかし事業仕分けで一度に取り上げられる予算項目の数は限られます。ですから、より大きな効果として期待したいのは、政府内の各部局全体で、「効果のない予算であれば事業仕分けで取り上げられるかもしれない」という緊張感が持たれて、自発的に予算の見直しが進むことです。
この担当者の発言は、まさにこのような自発的な見直しのインセンティブが働き始めていることを示しているのではないでしょうか。
今後の政府内各部局の動きを見届けていきたいと思います。

