今日の読売新聞に、国の役所の国会答弁作成作業が、夜中遅くまでかかっている実態について行われた調査に関する記事がありました。
この手の記事においては、答弁作成作業を遅らせている要因として、国会議員からの質問通告が遅いのではないかという論点のみが語られがちです。実際にこの記事においてもそうなっています。しかし、役所で答弁作成作業に当たってきた私としては、果たしてそれだけかなと思います。
というのは、役所の中で答弁を作り始めてからそれが最終的に固まる(「セット版になる」という言葉で言われます)までにもかなりの時間がかかるからです。
質問通告を受けると、役所間、部局間で「割り振り争い」が行われます。「これはうちの課が答えるべき問い(いわゆる「直撃」)ではない」という、「押し付け合い」です。これでまず時間を要します。
これを経て、やっと答弁書作成に入ります。担当課が原案を作るわけですが、その後、関係する部局に「合議(あいぎ)」にまわさなければなりません。関係する課にお伺いを立てるわけです。これを怠ると「うちは聞いていないぞ」と後から大騒ぎになります。これにも時間がかかります。
その合議を終えて、答弁書案は「上に上がる」ことになります。通常は担当課長補佐レベルが原案を作るわけですが、上に上がるとは、担当課長、その後、各局の総務課(企画官あたり)、そして局の中二階たる審議官・次長、さらには必要な場合には局長まで。
そしてさらにその後、役所の官房にまわります。そこで官房文書課あるいは官房総務課の「チェック」を受けます。その過程で、大臣秘書官に上がったりもするわけです。「上に上がる」道のりは大変長いものです。その間、作成担当課はじっと待っているわけです。
私が役所で答弁作成作業をやってきた時の、仕事の流れは概ねこのような感じでした。今はもう少し簡略化されているのかもしれません。
しかしこの記事を見ると、役所が質問通告を受けて答弁作成作業に着手した平均時刻は午後6時26分で、答弁作成終了の平均時刻は日付が変わった午前1時42分とあります。すなわち、答弁作成に着手してから、「セット版」になるまでに7時間16分かかっているわけで、私がやっていた時と変わらないなというのが私の印象です。いまだに、私がやっていた20年前と同じく、ひとつの答弁を作るのに7時間以上かかっているということ自体も問題なのではないでしょうか。