2000年代初頭にアルゼンチンは債務危機に直面し、国債が返済不能、いわゆるデフォルトの状態に陥りました。国債の大きな部分は広く国際的に保有されていて、金融危機が国際的に拡散する結果となりました。その頃私は国際通貨基金(IMF)に勤めていて、アルゼンチン問題への対応は大変難しいものだったことを昨日のことように思い出します。
その後アルゼンチンは、国債保有者の大半と、債務を7割程度に棒引きし、それに応じてくれた債権者に対して債務の返済を行っていく、という、いわゆる「債務の再構築」を行って、何とか今日までしのいできました。
そんな中、米国の最高裁判所が、米国のファンドなどの訴えを受けて、「債務を100%返済しなければならない」という判決を出しました。これまで行ってきた債務の再構築を否定したわけです。これにしたがうと、アルゼンチンはまたデフォルト状態に陥る可能性があります。
なぜこうなったか。これはひとえに金融市場の仕組みの問題です。
いまや金融市場はグローバル化し、国によってはアルゼンチンのように、国際的に広く国債を発行し、借金をすることができます。
しかし、この借金返済ができなくなった時に、どのよう仕組み、例えば裁判所のような場を通じて、秩序ある形で債務を整理していくかということについては、そのような仕組みも、あるいは裁判所のような組織も国際的には未整備のままです。
その結果が今回です。この問題は、私がIMFで勤務していた、20年近く前から指摘されていた問題。国際金融市場は、進んでいるようで意外と進んでいません。