今日は、午前中に、労働組合関係の方々のところで、講演を2席行い、両方で、日本の財政の危機的状況について、お話をしてまいりました。土曜日の開催ではありましたが、参加者の皆様には、熱心に聞いていただき感謝です。
ところで、今日の日本経済新聞の第一面に、大手銀行の不動産融資が急増しているという趣旨の報道がありました。これについてどう見るか。
大手銀行は、近年、不良債権の処理を第一の目標として取り組んできて、去る3月期決算においては、ついに大手銀行の不良債権比率は3%を切るところまで低下しました。これをもって、ここ数年間金融機関を悩ませてきた不良債権問題は一応の終息を見たと思います。
ところが、過去の問題の処理はいいとして、将来につながる収益力はどうか。この点がまだまだ大手銀行は弱い。そんな中で、大手銀行はどこも現在収益力の強化に必死です。そのひとつのあらわれが、不動産融資の急増でもあるのです。
ただし、私は、この動きをやや危ういと見ています。なぜなら、大手銀行においては、不動産融資の急増に見合う強力な審査能力、リスク管理能力が十分に備わっているかは疑問だと思っているからです。過去数年にわたって、大手銀行は不良債権処理に大きなエネルギーを割いてきました。しかし、あるいは、したがってというべきか、大手銀行は、不良債権以外の問題、たとえば審査能力強化といった問題には十分対応できていないのが現状ではないかと、私は見ています。
不良債権問題からの脱却は大きな成果です。しかし、今回の不動産融資の急増といったことが、将来再び不良債権を作り出す結果とならなければよいが、と感じています。
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