厚生労働省において、年金の財政検証が行われています。5年に一度、年金の財政状況が将来に向けて安定的なものとして維持されているかを確認する作業です。
この作業において、私が最も心配するのは、厚労省が楽観的な将来経済見通しをもとに、「こういう見通しなので、年金は安心」と簡単に結論づけてしまわないかということ。
実は5年前の財政検証の際にも、厚労省は、4.1%という極めて楽観的な年金積立金運用利回りの見通しを示し、これを基礎に年金は安心、との結論を導き出しました。
しかし一方で同時に、いわゆる「マクロ経済スライド調整期間」はそれまでより長引くことが示され、年金財政が当初の見通しより弱まっていることが明らかになりました。
さて、今回。今のところ、厚労省は前回よりもさらに高い年金積立金運用利回りを打ち出してくる模様です。相変わらず楽観的な見通しを前提に問題の先送りを図る姿勢です。
しかも同時に年金積立金の運用のあり方の見直しの議論を行っていて、その中で、株式はもとより不動産や商品先物などといったリスクの高い金融商品への運用を増やしていく方向です。こうやって運用利回りの見通しを、楽観的な、高めのものとすることで、先ほど指摘したような、問題の先送りをしているのです。
このような点は、先の衆議院予算委員会でも、私から指摘しました。こんなことでは、年金への国民の皆さんからの信頼が回復するわけはありません。