いわゆるサブプライムローン問題で、欧米の金融機関が極めて巨額の損失を計上しています。その損失への対応のために基金を作ろうと、日本の金融機関に対してこれまた巨額の資金融資枠の設定を米国金融機関が求めてきていることは先般書きました。(報道では、日本の金融機関はこの要請を断るようです)
他方、損失をこうむった欧米金融機関において、失ってしまった資本を再度強化するために、外部から出資を募るケースが続出しています。そしてその資本の提供先はのきなみ、最近急成長してきている「政府系ファンド」。
例えば、スイスのUBS、米国のシティ・グループはそれぞれ、シンガポール投資公社、アブダビ投資庁から1兆円前後の巨額の資本調達を行い、また今日の報道では米国のモルガンスタンレーも中国投資有限責任公社から5000億円を超える資本調達を行うとされています。
これらの世界になだたる大手金融機関を含む、いわゆる国際金融にかかわる一群の勢力は、俗に「マーケット」と言われます。そして、大手の金融機関の発言、行動は世界の金融市場、マーケットの状況に大きな影響を与えます。
マーケットは「利」で動きます。それが良くも悪くも、世界の経済の効率性の上昇、活性化につながってきました。もちろん90年代後半のアジア通貨危機の時に見られたように、マーケットは過剰に振れることがあり、それが経済にマイナス影響を与えることもあります。ですからマーケットは「完全」ではないと言われます。しかし総じて言うと、マーケットは「利」の追求を純粋に行っている限り、経済効率の上昇に貢献していることは間違いありません。
しかし、このマーケットが、資本の面から、政府系ファンドなどの、「利」だけではなく「政治的配慮」の可能性を排除できない勢力に影響力を行使されうる立場に至っているということは、マーケットが大きくゆがめられていく可能性があります。
今世界においては、原油など一次産品価格の急上昇が見られます。それをもとにした巨額の利益などを基礎とした政府系ファンド。まさに「政府が世界のマーケットを歪める」 そのような時代が来るのではないかと、強い危惧をおぼえざるをえません。
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