S&Pによる日本国債の格下げが発表された直後、菅総理が「そのような問題に疎いので」と発言したことが波紋を呼んでいます。
しかし、これは言葉面から受け取られる意味での「疎い」ということは、菅総理においてはありません。
なぜなら・・・・・実はS&Pはちょうど一年前、すでに日本の国債格付けについて、「AA」の格付けを維持しつつも、その見通し(アウトルック)を、ステーブル(安定的)から、ネガティブに引き下げていました。そして一般的にその後数カ月間の様子を見ながら、実際にAAという格付けを引き下げるかが検討されると言われていました。
その時は、ちょうど22年度予算案審議を行い、そして春以降は6月に向けて「財政運営戦略・中期財政フレーム」を策定してこうという時でした。
その時、菅総理は財務大臣、私は財務政務官。今でも鮮明に覚えていますが、財政運営戦略と中期財政フレームの議論の中で、「間違っても、財政運営戦略・中期財政フレームが発表された直後に格付けが引き下げられるようなことのないよう、しっかりしたものを作っていこう」と、皆で合言葉にように言い合いながら、相当のプレッシャーを感じながら策定作業を行っていきました。
そのような緊張感の中で、菅財務大臣(当時)を中心として作業を行ってきたわけで、したがって、菅氏が「疎い」ということはあり得ません。
果たして、昨年6月、財政運営戦略・中期財政フレームが策定された後、格付けが引き下げられるということはありませんでした。しかし今回引き下げられた・・・・・
もちろん私たちの、政権としてのパフォーマンスが厳しく評価されていることは言うまでもありません。そのことは心して、真摯に受け止めなければならないと思います。
しかし、財政運営戦略・中期財政フレームが策定されて半年以
上が経った今、そしていよいよねじれ国会のもとで、23年度予算案、社会保障と税の抜本改革などに超党派での議論を呼びかけていこうとしている中での格下げ。すなわち、財政を立て直すという政治的意思が、日本の政治全体の中にあるかとうこと自体が問われていると思います。
日本の政治家全体に対して、ひとりひとりの政治的良心が問われていると思います。