「百年安心の年金」
そう宣伝されてきた現在の年金制度。舛添厚生労働大臣は先日の国会で「『百年安心』とは約束していない」と述べました。しかしその後私が調べたところでは、2004年の年金法改正に向けた審議の中で当時の坂口厚労大臣は、「百年安心の年金にしていきたい」と明確に述べていました。
将来の(厚生年金の)年金給付が現役世代の賃金の50%を維持すること。おおざっぱに言って、これが「百年安心」の意味するところのひとつです。いわゆる「所得代替率」。
今年冬、厚労省による年金財政再検証が行われ、この50%という数字はかろうじて将来も維持されるとされてきました。
ところが今回明らかになった厚労省の試算においては、これが50%を下回るレベルまで落ち込むとされています。なぜか。この冬の財政再検証においては、国民年金の納付率を、社会保険庁が「目標」としている80%になるとして計算していました。しかしよく知られているように、この納付率は色々な策がとられているにもかかわらず低迷を続け、6割台の半ばから動きません。より実態に近い6割台として計算しなおすと、所得代替率が50%を下回る計算になるのです。
このことが報道されていますが、私は、これにはあまり驚きません。なぜなら、この冬の財政検証はもともともっと大きな問題を抱えていたからです。
それは、この冬の財政再検証は、将来の年金の運用利回りの見通しを4%以上の高利を前提に計算していたということです。どう考えても今後将来にわたって年率4%の高利運用を続けていくことは困難です。しかも、この利回りが少しでも下がる場合の所得代替率に与える影響は、日本の年金の仕組み上、極めて大きいのです。
無理やりに50%という数字を作ってみせた再検証と言えるでしょう。このような面からも年金の信頼回復には程遠いのです。
(写真は、今日の衆議院農林水産委員会、農地法等改正案の質疑の際のものです)
コメント
コメント一覧 (2件)
小沢一郎氏が20日に福岡に来るそうですが、福岡に住んでるものとして彼に福岡の地を踏んで欲しくないです…。
種々の情報解説、ありがとうございます。「所得代替率」・・・この言葉の本当の「意味」をご存知の方が、どれほどおられるでしょうか。4年ほど前(坂口大臣時代)に、「現役世代の月収額の60%」という言葉がテレビで飛び交いました。当時、私は66歳で年金生活。この、「現役世代の月収額」という言葉に疑問を感じて、各政党の本部の年金担当者に電話で質問をしました。共産党が一番正確の返事、公明党は良く解らない、民主党はそれなりの回答、自民党に至っては「貴方が退職をされた時の本給の60%」との回答。驚きました。私の周りでも「平均月収」の意味を知っている人は皆無です。先生には、釈迦に説法でしょうが、以下に、二つのネットブログの記事を転載します(許可は得ておりませんが公開されているものです)。
1.静岡新聞:ニュースの言葉より
現役世代(男子)の平均手取り月収に対し、年金受給世帯がどの程度の年金を受け取れるかを表す数値。本人の現役時代の月収に対する比率ではない。夫が平均賃金で厚生年金に40年加入、妻が40年専業主婦-という夫婦2人のモデル世帯で計算する。
2.夕刊フジ:ブログ
65歳時点で受け取る年金額が、現役世代の平均手取り収入の何%に相当するかを表した数値。2009年度の場合、賞与を含む男性の手取り収入は月平均35万8000円、夫婦2人の標準世帯の年金月額は22万3000円なので、所得代替率は62・3%となる。
50%を割り込む・・・といったことも重要ですが、「所得代替率、平均給与月額」についての国民の理解は、余りにも低く感じました。