諫早湾干拓の開門問題について、佐賀県の漁協が、農水省が提案している、「開門によらない、100億円の基金による有明海再生」という考え方を支持するということを決定したとの報道に接しました。
漁業関係者の中の意思決定ですから、そういうものとして受け止めたいと思います。
ただ、懸念もあります。
ひとつには、100億円の基金による有明海の再生、と言っても本当に実のある再生策を農水省は持っているのか。これまで、裁判においてもこの点、何度も私たちの方から問いかけましたが、農水省から説得力のある回答はありませんでした。
今でも、有明海特措法を基礎としながら、毎年有明海再生のために20億円弱の予算が組まれており、もう長年続いています。それでも有明海は今の現状です。100億円の予算を積んで解決できる問題ではない、開門調査しかない、のは明らかではないでしょうか。
もうひとつ、私たち佐賀県側としては、今の有明海の状況を踏まえ、例えば諫早湾干拓からの「こまめな排水」など、様々な要求を農水省にしてきています。この数年、海苔の大不作が続いたので特別の支援が必要だということも訴えてきています。
これら佐賀県からの特別な要求、要望に対して、農水省が対応しなければと思う理由は、私たちが開門を掲げ、そして裁判を行っているからです。
開門という旗を下ろせば、農水省は心底ホッとするでしょう。そして佐賀県からの様々な要求、要望にもおろそかな対応しかしなくなるでしょう。
これらの懸念を強く抱きます。
いずれにしても、100億円の基金案で和解をするかを決定するのは、原告団・弁護団です。その皆さんは、私のこのような思いと同じような思いであることは間違いありません。
引き続き、開門を求めて戦っていきます。